チャットボットとFAQの違いとは?両者を連携させる方法も解説
公開日 2025/04/23

デジタル技術の発展により、多くの企業がヘルプデスク業務の効率化を進めています。なかでもチャットボットやFAQシステムといったツールの導入が増えていますが、「どちらのシステムが自社に合っているのか」「予算内でどれほどの効果を見込めるのか」と悩む方も多いと思います。
そこで本記事では、チャットボットとFAQシステムの特徴や違いを詳しく解説。また、両者の機能を兼ね備えた「FAQチャットボット」についても紹介します。問い合わせ対応の改善を図り、顧客満足度を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
チャットボットとは
チャットボットは「チャット」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、顧客がチャット上で送信したメッセージに自動で応答するシステムです。Webサイトやアプリの画面上に表示され、ユーザーからの質問に対して必要な情報をすぐに提供します。
たとえば、通販サイトやサービスサイトのページの右下に「ご質問はありますか?」といったメッセージが表示されるのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。そこに質問を入力すると、回答を得られたり、関連情報のあるページへ誘導されたりします。このように人間のオペレーターに代わって、Web上で自動で対応するシステムがチャットボットです。
チャットボットは大きく分けて「シナリオ型」と「AI搭載型」の2種類があります。
シナリオ型チャットボット: あらかじめ想定された質問と回答のパターンに沿って対話が進む仕組みです。「もし〇〇と質問されたら、××と回答する」といった単純な条件分岐で作動します。設定した質問・回答のパターン内であれば確実に対応できますが、想定外の質問には答えられないことがあります。
AI搭載型チャットボット: 人工知能(AI)の一分野である自然言語処理技術を活用し、ユーザーの質問意図を理解して適切な回答を生成します。自然言語処理とは、人間が日常使う言語をコンピュータが理解・処理する技術のことです。AI搭載型は表現の揺れ(例:「注文状況」と「配送状況」など似た表現)にも対応でき、学習によって精度を向上させることが可能です。
チャットボットは業種問わず多くの企業で導入されており、以下のようなシーンで利用されています。
- アパレルショップのWebサイトで、サイズ選びや在庫確認の問い合わせに自動応答
- 金融機関での口座残高確認や簡単な手続きの案内
- 飲食店での予約受付や営業時間の案内
- ECサイトでの注文状況の確認や返品手続きのサポート
24時間365日対応できるため、顧客サービスの質を向上させるツールとして注目を集めています。
FAQシステムとは
FAQは「Frequently Asked Questions」の略で、「よくある質問」という意味です。FAQシステムは、これらの質問と回答をまとめたデータベースを構築・管理するためのツールです。
FAQシステムでは、企業がよく受ける質問とその回答を整理し、ユーザーが自分で必要な情報を検索できるようにします。質問はカテゴリ別に分類され、キーワード検索機能も備えています。また、アクセス分析機能を持つシステムでは、どの質問がよく閲覧されているかなどのデータを収集・分析することも可能です。
FAQシステムは顧客対応だけでなく、社内問い合わせ、コールセンター、技術サポートなど業種問わず多くの場面で活用されており、問い合わせ件数の削減や対応時間の短縮につながっています。
チャットボットとFAQシステムの違い
チャットボットとFAQシステムは、どちらも便利なツールですが、情報提供の方法や機能に違いがあります。以下の表で主な違いを比較してみましょう。
比較項目 | チャットボット | FAQシステム |
---|---|---|
対応できるQ&A数 | 300件程度が目安 | 300件以上の大量Q&Aに対応 |
回答スピード | 即時応答 | ユーザーが自分で探す必要あり |
表示できる情報量 | 限られた画面内での簡潔な回答 | ページ全体を使った詳細な説明可能 |
取得できるユーザー情報 | 対話を通じて詳細なニーズを把握 | 検索キーワードや閲覧ページの情報のみ |
|
専門知識が必要 (ノーコード製品も増加中) |
|
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
対応できるQ&Aの数
チャットボットとFAQシステムは、扱える質問数に明確な違いがあります。
チャットボットは、応答精度と簡潔さを重視するため、質問数は300件程度が目安とされています。データ量が多すぎると応答精度が低下し、管理も複雑になるからです。また、モバイル画面やチャットウィンドウといった限られた画面領域で情報を伝える必要があるため、簡潔で的確な回答が求められます。
FAQシステムはデータベースとしての特性を活かし、300件以上から対応できます。情報量が増えても、検索機能を活用することで必要な回答にたどり着くことが可能です。複雑な質問や詳しい説明が必要な内容にも対応でき、幅広いユーザーニーズに応えられます。
回答を表示するまでの早さ
チャットボットの最大の強みは、圧倒的な回答スピードにあります。ユーザーが質問を入力すると、プログラムが瞬時に適切な回答を検索・表示します。たとえ複数回のやり取りが必要になったとしても、各ステップで即座に応答するため、ユーザーはストレスを感じることなく、スムーズに情報を得られます。まるで専任のオペレーターが常に待機しているかのような体験を提供できます。
しかし、FAQシステムでは、ユーザー自身が目的のQ&Aを探し出す必要があります。カテゴリを辿ったり、キーワード検索を駆使したりと、目的の回答にたどり着くまで時間がかかります。また、ユーザーは自分の疑問に合致する表現や用語を正確に入力する必要があり、専門用語や検索ワードの選択によっては必要な情報を見つけられないケースも少なくありません。この「情報探索」のプロセスがユーザー体験の満足度を下げる要因となることがあります。
1回で表示できる情報の量
チャットボットはWebサイトの画面端に設置されていることが多く、回答を表示できる画面スペースも限られています。そのため、文章は簡潔にまとめる必要があり、長文の説明や複雑な図表を表示するのには不向きです。情報を小分けにして段階的に提供するような工夫が求められます。
反対にFAQシステムは、Webページ全体を使って情報を表示できるため、多くの情報を伝えられます。図や表、詳細な手順なども掲載でき、関連する情報へのリンクも簡単に追加できます。複雑な質問や深掘りが必要な問題に対し、情報をわかりやすく伝えられるのが特長です。
取得できるユーザー情報
チャットボットはユーザーと対話形式で情報を収集し、ユーザーの困りごとや疑問を詳しく把握します。会話の流れから質問の真意や満足度を読み取り、フォローアップ質問からユーザーの関心の広がりも捉えられるのが強みです。これらのデータは、ユーザーニーズの分析やマーケティング戦略の立案、製品改善など幅広い用途に活用できる価値を持っています。
一方、FAQシステムでは、検索キーワードや閲覧ページのログなど限られた情報しか取得できません。なぜその情報を探しているのか、得られた回答に満足したのかといった詳細は把握しづらく、ユーザーの本質的なニーズを掴みにくい傾向があります。その結果、チャットボットと比較すると表面的な分析に留まりがちで、ユーザーへの理解に差が生じやすくなります。
導入・運用の難しさ
チャットボットは、特にAI搭載型の場合、専門的な技術や知識を持ったIT人材が必要になることがあります。自然言語処理の調整や対話シナリオの設計など、導入・運用には一定のスキルが求められます。
ただ、近年はプログラミングが不要な「ノーコード」や最小限のプログラミングで済む「ローコード」で導入できるサービスも増えており、技術的なハードルは下がってきています。これらのサービスでは、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)と呼ばれる、ボタンやアイコンを使って直感的に操作できる画面を通じて、簡単に対話シナリオを組むことができます。
FAQシステムは比較的導入が容易で、プログラミングができない人でも、説明を見ながらFAQの作成やアクセス分析ができるように設計されているものが多いです。既存の質問と回答をデータベースに登録するだけで利用を開始でき、管理画面も直感的に操作できるものが増えています。
チャットボットとFAQシステムそれぞれが向いている場面
チャットボットとFAQシステムは、どちらも顧客サポートに欠かせないツールですが、それぞれの特性に応じて使い分けることが重要です。ここでは、チャットボットとFAQシステムがどのような場面に適しているのかを解説します。
チャットボットに向いている場面
チャットボットは、主に以下のような状況で効果を発揮します。
即時性が求められる問い合わせへの対応
顧客がすぐに情報を求めている場合、チャットボットの即時性は強みになります。たとえば、ECサイトで商品を見ている顧客が仕様について質問したいとき、すぐに回答が得られれば購入につながる可能性が高くなります。また、24時間365日対応できるため、営業時間外の問い合わせにも対応可能です。顧客の待ち時間を減らすことで満足度を高め、販売機会の損失を防げます。
対話を通じたニーズの明確化
「何かおすすめはありますか?」のような漠然とした質問でも、チャットボットは質問を重ねて顧客との対話を深めることで、本当に求めているものを引き出します。予算や用途、こだわりなどを聞きながら、より顧客のニーズに合った商品やサービスを提案することで、購入の後押しや顧客満足度の向上につながります。
カスタマーサポート業務の効率化
単純で繰り返し発生する質問への対応をチャットボットに任せることで、人的リソースを複雑な問い合わせや高度な判断が必要な業務に集中させられます。よくある質問として代表的な「営業時間はいつですか?」「返品方法を教えてください」といった定型的な質問はチャットボットが処理し、オペレーターは複雑な対応や個別のサポートに時間を使えます。
グローバル市場での多言語サポートを実現
グローバル展開している企業や、多様な言語を話す顧客を持つ企業にとって、チャットボットは有効な手段となります。 外国語対応のスタッフを用意してサポート体制を整えるにはコストがかかりますが、AIを活用することで、簡単に多言語でのサポートを提供できます。 言葉の壁をなくすことで、リピーターの増加や新規顧客の獲得にもつながり、海外市場での競争力を高めることができます。
モバイルユーザーへの対応
スマホユーザーにとって、大量の情報から目的のコンテンツを見つけ出すのは容易ではありません。チャットボットなら対話形式で情報提供できるため、小さな画面でもスムーズに情報を得られます。質問を入力するだけで必要な回答を得られるので、ユーザー体験が格段に向上します。特に電車での移動中や仕事の合間など、限られた時間でサイトを閲覧するモバイルユーザーにとって、この手軽さと効率性は大きな魅力といえるでしょう。
FAQシステムに向いている場面
FAQシステムは、情報を整理して提供するツールとして、次のようなシーンで特に効果を発揮します。
詳細な説明が必要な場合
製品マニュアルやサービスの詳細な使用方法など、文章量が多い内容はFAQシステムが適しています。画像や動画も組み合わせながら、段階的に説明することで複雑な情報も理解しやすく伝えられます。たとえば、ソフトウェアのインストール手順やトラブルシューティングなどはFAQで解説するとわかりやすいでしょう。技術的な内容や複数の手順が必要な作業を説明する際に特に有効です。
じっくり情報を探したい場合
契約内容や規約、企業の制度など、時間をかけて正確に理解したい情報は、チャットボットよりもFAQページが適切です。ユーザーは自分のペースで情報を読み進めることができ、必要に応じて前後の関連情報も確認できます。特に法的な内容や重要な決断をする前の比較検討では、利用者が情報をじっくり読み、考えるための時間と場所を提供できる点がFAQシステムの良さといえます。
明確な目的を持つユーザー対応
「特定の機能の設定方法を知りたい」など、明確な質問を持ってアクセスするユーザーには、カテゴリ別に整理されたFAQシステムが便利です。検索機能を使って素早く目的の情報にたどり着けるため、効率的に問題解決できます。情報リテラシーの高い方や専門知識を持つビジネスユーザーにとって使いやすいサポート方法となります。
SEO対策として活用
FAQページはSEO(検索エンジン最適化)の観点からも有効です。顧客がよく検索するキーワードを含むFAQを充実させることで、検索結果上位に表示される可能性が高まり、新規顧客の獲得にもつながります。検索エンジンは「ユーザーの疑問に答える役立つ内容」を高く評価する傾向があるため、よくある質問とその回答をきちんと整理したFAQページは自然な形でSEO効果を生み出します。
法的・技術的に正確さが求められる情報
返品ポリシーや保証内容、法的な手続きなど、言葉の選択や表現に正確さが求められる情報は、チャットボットよりもFAQシステムでの提供が適しています。事前に法務部門などのチェックを受けた正確な情報を掲載できるため、誤解やトラブルを防げます。契約関連や金融商品、医療情報など、間違った情報提供がリスクにつながる分野では、確認済みの情報を提供できるFAQの方が安心です。
チャットボットとFAQシステムの共通点
チャットボットとFAQシステムは異なる特性を持ちながらも、いくつかの共通点があります。ここでは、両者が持つ特徴や効果について解説します。
問い合わせ対応の担当者の負担軽減に効果が期待できる
チャットボットとFAQシステムは、問い合わせ対応の効率化に役立ちます。担当者は繰り返し答える単純な質問から解放され、専門知識が必要な案件に注力できるようになります。また、チャットボットが自動で回答を出したり、ユーザーが自分で回答を調べたりするため、問い合わせ対応の担当者の負担を軽減できます。特に同じ質問が繰り返されるような場面で効果を発揮し、残業時間の短縮や業務の効率化に有効です。また、24時間対応できる点も、担当者の休日・夜間の負担を減らし、ワークライフバランスの改善につながるでしょう。
ユーザーの満足度を向上させられる
両システムとも、ユーザーが待たずに情報を得られる点が魅力です。問い合わせてから回答を得るまでの時間が短くなり、ユーザーはスムーズに必要な情報にアクセスできます。営業時間を気にせず利用できるため、「今すぐ知りたい」というニーズにも対応できます。
担当者側も単純な問い合わせが減ることで余裕が生まれ、複雑な相談には丁寧に対応できるようになります。「機械的な対応ではなく、本当に自分の問題を理解してくれた」と感じるユーザーが増え、全体的な顧客満足度の向上につながります。
作成するためにQ&Aのデータを用意する必要がある
どちらのシステムも、質問と回答のデータベースが必須となります。過去の問い合わせ内容を分析し、よくある質問とその回答を整理することが欠かせません。ただ質問をリストアップするだけでなく、ユーザーがどんな言葉で質問するかを想定して、さまざまな言い回しにも対応できるようにする必要があります。
データの質と量は回答の正確さを左右するため、定期的な見直しと更新が重要です。新商品の発売や仕様変更があれば、すぐに情報を更新することで、常に正確な情報提供ができるシステムになります。「問い合わせた内容と違う回答が返ってきた」というユーザーの不満を防ぐためにも、データの質にはこだわりましょう。
チャットボットとFAQシステムは連携できる
チャットボットとFAQシステムはそれぞれ単体のツールでも利用できますが、近年ではこの2つのシステムを組み合わせた新しいツールが登場しています。それが「FAQチャットボット」です。
FAQチャットボットとは、名前のとおりチャットボットとFAQシステムを組み合わせたシステムです。ユーザーがチャット形式で質問すると、AIがその意図を理解し、FAQデータベースから最適な回答を提供します。たとえば、「商品を返品したい」といった質問の場合、具体的な手順や必要書類などの情報をすぐに提供できます。複雑な問い合わせには「詳しくはこちら」としてFAQページへ誘導します。
このシステムの強みは、チャットボットとFAQのデメリットを補完できる点です。チャットボットは詳細な情報の提供に限界がありますが、FAQの豊富なデータを活用することで質の高い回答が可能になります。一方、FAQ単体ではユーザーの反応を把握しにくいですが、チャットボットが「この回答で解決しましたか?」と確認することで、FAQの有効性を測定し改善に役立てられます。
FAQチャットボットを導入することで、ユーザーは対話形式で自由に質問でき、詳細情報もすぐに得られるため、満足度の高いサポートを受けられます。企業側も問い合わせデータをもとに、適切なFAQやサポート体制を整え、顧客対応の質を高められます。
FAQチャットボットの作り方
FAQチャットボットの効果が分かったところで、実際にどのように導入すればよいのでしょうか。チャットボットとFAQシステムの連携には専門的な知識が必要と思われがちですが、現在ではさまざまな方法で導入が可能になっています。ここからは、FAQチャットボットの作成プロセスを段階的に解説します。
1.事前準備
まず導入の目的を明確にします。問い合わせ対応の効率化なのか、顧客満足度の向上なのか、あるいは営業機会の創出なのかによって、必要な機能や設置場所が変わってきます。
次に、導入方法や予算、設置場所などを検討します。自社で開発するのか、既存のツールを活用するのか、外部に委託するのかなど、選択肢を整理しましょう。また、Webサイトのどの部分に設置するか、どのような質問に回答できるようにするかなど、具体的な計画を立てることが大切です。
また、この段階でFAQチャットボットに必要な機能を洗い出しも行いましょう。多言語対応や画像認識、音声認識といった特殊な機能が必要かどうかを検討します。これらの要件をもとに、開発ツールやプラットフォームを決定します。
事前準備のチェックリストとして以下が挙げられます。
- 導入目的の明確化(問い合わせ削減、顧客体験向上、営業支援など)
- 予算の設定
- 設置場所の決定(トップページ、問い合わせページ、商品ページなど)
- 対応する質問範囲の特定
- 必要な機能のリストアップ
- 開発方法・ツールの選定
2.FAQチャットボットを作成する
FAQチャットボットを作成する方法には、企業のリソースや目的に応じてさまざまな選択肢があります。大きく分けると、自社で開発する方法、市販のツールを活用する方法、外部の専門企業に委託する方法の3つが挙げられます。それぞれにメリットとデメリットがあるため、開発コストや運用のしやすさ、カスタマイズ性などを考慮して選択しましょう。
以下では、各方法の特徴や適した企業のタイプについて解説します。
①自社開発による方法
自社開発は、プラットフォームや開発ツールを自社内で選定し、一からシステムを構築するアプローチです。企業が持つ独自のニーズを最大限に反映できるため、特化した機能や操作性を追求できるのが大きなメリットです。
具体的には、特定の業界向けのチャットボットを開発する場合、その業界特有の用語やプロセスに合わせた最適化を行うことが可能です。また、セキュリティ要件が厳しい企業では、自社内でシステムを構築することにより、機密情報を外部に依存せずに扱えます。
しかしながら、専門的な技術スキルが要求されるため、IT人材の採用や社内教育に多額の投資が必要です。開発プロセスも複雑化しやすく、要件定義やテストフェーズでの厳密な品質管理が求められます。これにより、プロジェクトの進行が遅れたり、最終的な成果物の品質にばらつきが生じるリスクも考慮しなければなりません。
自社開発による方法は、IT人材が豊富で、自社の特殊な要件を持つ企業や大規模なシステム同士の連携が可能な大企業に適していると言えるでしょう。
②既存ツールを活用する方法
既存ツールを活用する方法は、FAQチャットボット作成ツールやサービスを利用する形態です。短期間かつ比較的低コストで導入でき、多くのツールはノーコードで設計されているため、プログラミングの専門知識がなくても始められます。
この方法の大きなメリットは、専門ベンダーのノウハウや最新技術が組み込まれたツールを即座に活用できることです。また、多くのツールはAI技術の進化に合わせて定期的にアップデートされるため、常に最新の機能を利用できます。導入時のリスクも比較的低く、試験的な導入から段階的に拡大していくアプローチも取りやすいでしょう。
代表的なツールには以下のものがあります。
- IZANAI Powered by OpenAI:OpenAIの技術を活用した生成AI型チャットボット。PDFやWebサイトのURLを登録するだけで導入でき、多言語対応やAI OCRなど多機能を備えています。他社に比べて安価なのも特徴です。
- PKSHA FAQ:高精度な日本語検索エンジンを搭載し、同義語検索やFAQの視覚的分析が可能。対話型FAQやSEO最適化機能も提供しています。
- AI-FAQボット:自然言語処理AIを搭載し、話し言葉や曖昧な質問にも対応。Excel形式のQAデータをアップロードするだけで利用可能で、TeamsやLINE WORKSとの連携にも対応しています。
ただし、カスタマイズや独自機能の導入には制約があることが多く、企業ごとの特殊なニーズに対応するには限界があります。また、サブスクリプションモデルが一般的であるため、長期的な運用コストも予め考えておきましょう。
③外部委託による方法
外部委託は、開発会社やベンダーに依頼してFAQチャットボットを開発・導入する方法です。
外部委託の利点は、専門会社の知見やノウハウを活用できることです。要件定義から実装、保守までトータルサポートを受けられるため、自社内のリソースが限られている場合に有効です。また、過去の導入事例や最新技術のトレンドを踏まえたアドバイスを受けられるため、自社では気づきにくい機能や設計を取り入れやすくなります。専門チームによる品質管理やテスト、保守体制が整っており、安定したシステム運用が期待できます。
一方で、外部委託はコストが高くなりやすいというデメリットがあります。開発会社との調整や進捗管理も必要になり、コミュニケーションコストが発生します。また、開発会社ごとに得意分野やアプローチが異なるため、自社のニーズに合ったパートナー選びが重要になります。契約時には、納品後のサポート体制や追加開発の費用体系についても確認しておきましょう。
外部委託は、独自性の高いシステムを必要としながらも、自社内に十分な開発リソースがない中堅・大企業に適しています。
3.動作確認
作成したFAQチャットボットは、いきなり公開するのではなく、まず動作確認を行います。想定される質問に対して正確に回答できるか、対話の流れは自然か、リンク先は正しいかなどをチェックします。
テスト項目の例は以下が挙げられます。
- 基本的な質問への回答精度
- 類似質問(言い回しの違い)への対応
- 複数の質問が含まれる場合の処理
- エラー時の挙動
- FAQページへの誘導の適切さ
- レスポンス速度
- スマートフォン表示の確認
不具合や改善点があれば修正し、再度テストを行います。この段階で社内のテスターに試用してもらい、フィードバックを収集するのも効果的です。十分なテストを経て問題がないことを確認したら、公開に進みます。
FAQチャットボットの運用を開始した後の注意点
FAQチャットボットを公開した後も、継続的な改善と管理が必要です。ここでは運用段階での注意点について解説します。
定期的に修正・アップデートを行う
FAQチャットボットを運用していると、ユーザーから「ここが使いにくい」「こうして欲しい」といった意見が寄せられることがあります。また、実際の利用状況を分析すると、想定していなかった使われ方や、回答精度が低い質問などが見えてくることもあります。
こうしたフィードバックや分析結果をもとに、定期的に修正・アップデートを行うことが重要です。ユーザーの声に耳を傾け、継続的に改善していくことで、使いやすいFAQチャットボットになっていきます。
常に最新・正確な情報を提供する
FAQチャットボットが古い情報や誤った情報を提供すると、ユーザーの混乱を招き、信頼性を損なう恐れがあります。製品やサービスの内容が変更された場合、料金体系が改定された場合など、情報に変更があった際は速やかに更新する必要があります。
情報更新が特に重要な項目は以下のとおりです。
- 料金・価格情報
- 営業時間・サービス提供時間
- 連絡先情報
- 法律・規制に関連する内容
- 製品仕様やサービス内容
- キャンペーン情報
定期的に情報の正確性を確認し、必要に応じて更新する仕組みを整えておくことが大切です。特に法律や規制に関連する情報は慎重に扱い、誤った情報を提供しないよう注意しましょう。
あらかじめFAQチャットボットの運用体制を決めておくと良い
FAQチャットボットを効果的に運用するためには、事前に運用体制を構築しておくことが重要です。ユーザーからの意見の確認、情報の更新、外部の制作会社との連絡などを担当する人を決め、役割分担を明確にしておきましょう。
運用体制の一例として、以下のように役割を分担するとスムーズに管理できます。
- 責任者:全体の運用方針の決定、予算の管理
- 内容管理者:FAQの更新や新規Q&Aの追加
- 技術担当:システムの不具合対応やベンダーとの調整
- 分析担当:利用データの分析と改善施策の提案
また、FAQチャットボットがどこまで対応し、どのような場合に人間が対応するのかを決めておくことも重要です。複雑な質問や感情的なクレームには、人間が対応するのが望ましいケースもあります。そのような場合のエスカレーションルートを設定しておくと、スムーズな対応が可能になります。
具体的には、チャットボットが3回連続で「うまく理解できませんでした」と返答した場合や、「オペレーターと話したい」といったキーワードが入力された場合に、自動的に有人チャットへ切り替わるよう設定をします。これにより、ユーザーのストレスを軽減し、適切なサポートを提供できます。
よくある質問(FAQ)
最後にFAQチャットボットについて、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1.チャットボットとFAQシステムは、どちらが導入コストが低いですか?
A.一般的にはFAQシステムの方が導入コストは低くなります。チャットボット、特にAI搭載型は開発や調整に専門知識が必要になることがあり、コストが高くなる傾向があります。ただし、近年はノーコードツールやSaaSとして提供されるチャットボットサービスも増えており、初期コストを抑えた導入も可能になってきています。
Q2. FAQチャットボットの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A.導入方法や規模によって異なりますが、既存のツールを活用する場合は早ければ1〜2週間程度、自社開発の場合は1〜3ヶ月程度が目安です。既存のFAQデータがあるかどうかや、連携する他システムの数などによっても期間は変わります。
Q3.小規模な企業でも導入するメリットはありますか?
A.小規模企業でも十分メリットがあります。特に人的リソースが限られている企業では、基本的な問い合わせをFAQチャットボットが担うことで、少人数でも質の高い顧客サポートを提供できます。初期投資を抑えられるクラウド型サービスも多く提供されているため、規模に合わせた導入が可能です。
Q4.チャットボットに必要なQ&Aはどのように準備すればよいですか?
A.まずは過去の問い合わせ履歴を分析し、頻出質問を洗い出すことが基本です。顧客サポート担当者に対するヒアリングも有効です。また、Webサイトの検索キーワードやアクセスログから、ユーザーが知りたい情報を把握することもできます。Q&Aは顧客目線の言葉で作成し、専門用語はできるだけ避けるか、わかりやすく説明するよう心がけましょう。
Q5.AIを活用したFAQチャットボットと従来型のシナリオ型チャットボットはどう違いますか?
A.AI型は自然言語処理技術を用いて、表現の揺れや曖昧な質問にも対応できる特徴があります。また、学習によって精度が向上していきます。一方、シナリオ型は事前に設定した質問と回答のパターンに基づいて動作するため、想定内の質問には確実に答えられますが、柔軟性に欠ける面があります。予算や目的に応じて選択すると良いでしょう。
まとめ:目的や用途に合わせてチャットボットとFAQを使い分けよう
チャットボットとFAQシステムはそれぞれに特性があり、使い分けることで効果的な顧客サポートが実現します。チャットボットは即時性と対話性に優れ、FAQシステムは情報量の多さと詳細な説明に強みがあります。
両者を連携させたFAQチャットボットを導入することで、それぞれの長所を活かしながら短所を補い合うことができます。導入にあたっては、目的を明確にし、事前準備を十分に行った上で、適切な方法を選択することが重要です。
また、導入後も継続的な改善と管理を行い、常に最新・正確な情報を提供することで、ユーザー満足度の向上と問い合わせ対応の効率化を実現できるでしょう。目的や用途に合わせて最適なツールを選択し、効果的な顧客サポート体制を構築してください。
顧客とのコミュニケーション手段は日々進化しています。FAQチャットボットもまた、AIや自然言語処理技術の発展により、さらに高度なサポートが可能になるでしょう。ユーザーのニーズを理解し、適切なツールで応えていくことが、これからの顧客サポートに求められています。