多言語チャットボットとは?導入するメリットや実際の導入事例を紹介

更新日 公開日 2025/04/25

多言語チャットボットとは、AIを活用し、複数の言語に対応できる自動応答システムです。訪日外国人の増加やグローバルビジネスの拡大に伴い、企業や自治体での導入が進んでいます。

「外国人観光客からの問い合わせ対応できない」「海外からの注文が増えたものの、外国語対応が追いつかない」といった課題を抱えていませんか?こうした問題を解決する企業として、多言語チャットボットが注目されています。

本記事では、多言語チャットボットの基本や導入メリット、活用事例などをわかりやすく解説します。

目次

多言語チャットボットとは

多言語チャットボットは、AIや自動言語処理(NLP)を活用し、複数の言語でユーザーと会話する自動対応システムです。英語、中国語、フランス語、韓国語、タイ語、ベトナム語など、さまざまな言語に対応しており、観光地やホテル、自治体、企業などで幅広く利用されています。

たとえば、訪日外国人向けの観光案内や、海外向けECサイトのカスタマーサポートで導入され、スムーズなコミュニケーションを実現。適切な対応を提供することで、顧客満足度の向上や業務効率化につながります。

一部のチャットボットでは、利用者の言語を自動検出したり、必要に応じて有人対応に切り替えたりする機能も搭載しています。多言語対応のニーズが高まる中、企業や自治体にとって注目のツールとなっています。

多言語対応チャットボットの需要が高まっている理由

訪日外国人の増加やグローバル化の進展により、多言語対応の重要性が高まっています。日本政府観光局が発表した「 訪日外国人旅行者統計」によると、2025年1月の訪日外客数は約378万人で、前年同月比で40.6%増を記録。単月として過去最高を更新しました。

また、日本国内の在留外国人数も増加傾向にあります。出入国在留管理庁の「令和6年6月末現在における在留外国人数について」によると、2024年6月末の在留外国人数は約359万人で、前年末比で約18万人増加しました。

出典:出入国在留管理庁【令和6年6月末】公表資料

外国人住民の増加に伴い、行政サービスやECサイトでは、多言語対応の需要が高まると予想されます。それに伴い、ECサイトなどのカスタマーサポートにおいても、海外顧客からの問い合わせ対応が不可欠になっています。人手不足を補いながら、多言語対応を強化する手段として、チャットボットの導入が進んでいます。

多言語チャットボットが役立つ場面

多言語のチャットボットは、どのようなシーンで役立つのでしょうか。代表的な活用シーンは以下の4つが挙げられます。

旅行業界(ホテル・観光地・空港・駅・飲食店)での外国人旅行者の対応

訪日外国人が増え、観光業界では外国語対応が求められています。しかし、常に多言語を話せるスタッフを配置するのは困難です。

そこで、多言語チャットボットを導入すれば、ホテルの予約案内や観光地情報の提供、飲食店でのメニュー説明、空港や駅での交通案内を自動化できます。実際に、熊本市では観光案内サイトに多言語対応のチャットボットを導入し、観光サービスの向上に成功しています。

深夜や早朝の問い合わせが発生しやすい旅行業界にとって、24時間対応が可能になることもチャットボットの大きな魅力といえるでしょう。

参考記事:熊本市 – 多言語による観光案内を自動化

自治体での行政手続き・街の暮らしのサポート

外国人住民や長期滞在者の増加に伴い、自治体での多言語対応が急がれています。多言語チャットボットを活用すれば、行政手続きや税金・保険に関する問い合わせ、地域のイベント情報など、日常生活に欠かせない情報を迅速に提供できます。

たとえば、「ゴミの分別方法がわからない」「市役所の窓口は何時まで開いているのか」といったよくある質問に、チャットボットが自動で回答可能です。これにより、外国人住民は24時間いつでも、母国語で必要な情報を得られます。

また、職員の負担も軽くなり、よりきめ細やかな住民サービスに注力できるのも大きなメリットです。多言語チャットボットが言葉の壁をなくし、誰もが安心して暮らせる街づくりをサポートします。

海外顧客とのやり取り

海外から日本のECサイトで商品を購入する人が増え、多言語対応の重要性が増しています。「日本語がわからないから購入を諦めた」という海外顧客を逃さないためには、多言語チャットボットが有効です。

チャットボットが、商品情報や購入手続きを母国語で案内することで、顧客の不安を解消し、購入を後押しします。配送状況の確認や、返品・交換の手続きにも自動対応が可能です。スムーズな対応は顧客満足度を向上させ、リピーター獲得、返品率の低下にもつながります。

多国籍企業の社内問い合わせ・社員教育

多国籍企業では、社員向けの社内問い合わせ対応にも多言語チャットボットが役立ちます。就業規則や給与・休暇申請の方法など、よくある質問に自動対応することで、業務効率が向上します。

また、研修資料の翻訳や業務マニュアルの提供にも活用でき、新入社員のスムーズな業務習得もサポートします。社員同士のコミュニケーションも円滑になり、働きやすい環境づくりが実現するでしょう。

多言語チャットボットを導入するメリット

多言語対応のチャットボットには、業務の効率化や顧客満足度の向上など、さまざまな利点があります。ここでは、主な5つのメリットを紹介します。

母国語対応による満足度・信頼度の向上が期待できる

多言語チャットボットを導入する最大のメリットは、顧客が母国語でスムーズにやり取りできることです。

観光庁の「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」によると、訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこととして、「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」(22.5%)が上位に挙げられています。この結果からも、多くの訪日外国人が母国語での情報提供を求めていることがわかります。

多言語チャットボットを利用すれば、慣れ親しんだ言葉で問い合わせができるため、情報の理解度が深まり、ストレスや誤解を減らせます。

人手不足の解消につながる

外国語を話せるスタッフを確保するのは簡単ではありません。とくに、観光業やEC業界では、問い合わせ対応に多くの時間を割かれるケースが課題となっています。

多言語チャットボットを導入すれば、外国語対応を自動化でき、人的リソースの負担を軽減できます。実際に、大阪観光局では公式観光情報サイトの「OSAKA-INFO」に多言語生成系AIチャットボット「Kotozna laMondo(コトツナ ラモンド)」を導入。2025年大阪・関西万博に向けて、観光案内所やコールセンターでの対応効率の向上、観光情報の管理業務の省力化を図っています。

参考記事:【共同リリース】観光案内に多言語生成系AIチャットボットを日本初導入

外国人スタッフの労働環境の改善に効果的

多国籍な職場では、就業規則や業務の進め方を正確に理解してもらうことが重要です。多言語チャットボットを活用すれば、給与や有給休暇、社会保障に関する質問など、外国人スタッフが母国語で確認でき、安心して働ける環境を整えられます。

また、母国語でやり取りすることで、日本語の理解不足によるトラブルも未然に防げるでしょう。さらに、業務マニュアルや研修内容をチャットボットで提供すれば、自己解決を促し、社員教育のコスト削減にも役立ちます。

海外からの問い合わせに時差を気にせず対応できる

世界展開する企業にとって、時差による対応の遅れは大きな課題です。多言語チャットボットなら24時間365日対応でき、海外からの問い合わせにもすぐに返答できます。

たとえば、海外のECサイト利用者が、商品購入前に詳細を確認したい場合でも、チャットボットがリアルタイムで回答することで、機会損失を防げます。とくに、時差の影響を受けやすい企業にとっては、スムーズなコミュニケーションを実現する有効なツールとなるでしょう。

蓄積したデータを海外展開に活かせる

多言語チャットボットは、ユーザーの問い合わせ内容や行動データを蓄積できるため、海外展開を考える企業にとって貴重な情報源となります。

どの国のユーザーがどのような質問を多くしているのかを分析することで、市場のニーズを把握し、サービス改善やマーケティング戦略に活用可能です。また、言語ごとの問い合わせ傾向をもとに、商品説明やFAQを最適化することで、より効果的な海外展開が実現できます。

多言語チャットボットを導入するときの注意点

多言語のチャットボットを導入する際は、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。ここでは、代表的な3つの注意点を解説します。

誤訳や不自然な文章が生成される可能性がある

多言語チャットボットは、AIによる自動翻訳機能を活用していますが、100%正確な翻訳ができるわけではありません。言語によっては、誤訳や不自然な表現が生成され、ユーザーが正しく理解できないケースもあります。

とくに、業界特有の専門用語や口語表現は、意図したとおりに伝わらないことがあるため、導入前に翻訳の精度を確認することが大切です。事前にテスト運用を行い、実際のやり取りをチェックしましょう。
また、自然言語処理(NLP)の精度が高いチャットボットを選ぶことで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。

必要な言語を可能な限り網羅したサービスを選ぶ

対応できる言語の種類や範囲は事前に確認が必要です。サービスによって対応可能な言語数や翻訳の精度が異なるため、自社のターゲットに適した言語がサポートされているかを見極めましょう。

たとえば、観光業では英語、中国語、韓国語、フランス語など、訪問者の多い国の言語に対応することが求められます。一方、自治体では地域に住む外国人住民の国籍を考慮し、必要な言語を選定すると効果的です。将来的に言語を追加ができるサービスを選ぶと、柔軟な運用が可能になります。

多言語チャットボットの運用体制を整える

多言語チャットボットは導入するだけではなく、適切な運用体制を整えることが重要です。定期的なメンテナンスやデータ更新を怠ると、ユーザーに提供する情報が古くなり、誤った案内につながる可能性があります。

また、利用者からのフィードバックを収集し、必要に応じて改善しましょう。翻訳の品質を維持するために、外国語の読み書きに慣れている担当者を確保するのも有効です。スムーズな運用を実現するために、導入前に役割分担や運用フローを明確にしておくと安心です。

多言語チャットボットの導入事例

実際に多言語チャットボットを活用している企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、南海鉄道、UNIQLO、サンルート新宿、北九州市の事例を紹介します。

AIチャットボットでインバウンド客の対応を強化|南海電鉄

南海電鉄は、訪日外国人の増加に対応するため、多言語対応AIチャットボット「AIさくらさん」を導入しました。韓国や中国からの観光客が急増し、駅スタッフの対応が限界に達していたため、円滑な案内を実現する狙いがありました。

駅構内にデジタルサイネージを設置し、関西空港や特急ラピートの利用方法、切符の引き換え方などの問い合わせに対応できる環境を整備。英語・中国語・韓国語に対応し、より迅速で正確なサービスを提供しています。

導入後は、問い合わせ対応の効率化により、利用者の満足度が向上。同時に駅スタッフの負担軽減にもつながりました。今後は無人駅やインターホン対応の駅への展開を検討しており、QRコードを活用した旅行者向けの情報提供も計画しています。また、利用データを分析し、旅行者のニーズを把握することで、さらなるサービス改善を進めています。

参考記事:AIを"同僚"にしてみたら ~AIさくらさん導入企業インタビュー~

通販サイトでの注文・キャンセル・コーディネートの提案等をサポート|UNIQLO

ユニクロは、ECサイトの利便性向上を目指し、多言語対応AIチャットボット「UNIQLO IQ」を導入しました。世界各国のユーザーが、オンラインでスムーズにオンラインショッピングを楽しめるよう、日本語・英語・中国語・韓国語に対応。国内外の顧客が、商品選びや注文手続きを簡単に行えるようになりました。

「UNIQLO IQ」は、商品検索や購入サポートに加え、注文キャンセル、配送状況の確認、サイズ選びのアドバイスなどもサポート。「ほしい商品が見つからない」「自分に合うサイズがわからない」といった悩みに対し、フリーワード検索やレコメンド機能で最適な選択肢を提案します。さらに、購入品のコーディネート提案も行い、ユーザーの満足度向上に貢献しています。

参考記事:IQ・チャットサポートについて | ユニクロ | ユニクロお客様窓口

人手不足による多言語対応の難しさをチャットボットで解消|サンルート新宿

サンルート新宿では、訪日外国人旅行者の増加に伴い、多言語対応の強化が急務となっていました。しかし、人手不足の影響でフロントスタッフのみでの対応が難しく、とくに飲食店予約業務の負担が大きな課題となっていました。

そこで、多言語AIチャットボット「BEBOT」を導入し、宿泊客の利便性向上とスタッフの負担軽減を実現。「BEBOT」は、宿泊客や見込み顧客からの問い合わせにAIが24時間対応し、英語・中国語でのサポートも可能です。ホテルの基本情報やチェックイン・チェックアウト手続き、周辺観光案内を提供するほか、英語対応の有人チャット機能を活用したレストラン予約代行にも対応しています。

導入後は、フロントスタッフの業務負担が大幅に軽減され、飲食店予約業務も効率化。24時間対応により宿泊客の満足度が向上し、口コミ投稿の増加にもつながりました。また、チャット履歴の分析を通じて宿泊客のニーズを把握し、最適なサービス提供へとつなげています。

参考記事:サンルート新宿における「BEBOT」活用例

外国人旅行者を対象としたキャンペーンに導入|福岡県北九州市

福岡県北九州市では、インバウンド観光の回復に伴い、消費拡大と観光振興を目的とした「ウェルカム北九州!キャンペーン」を実施しました。

このプロジェクトでは、外国人旅行者向けに対象店舗で使用できる電子クーポン「WELCOME!KitaQ COUPON」を配布し、北九州の魅力を体験してもらう取り組みを推進。キャンペーンWebサイトには、多言語対応AIチャットボット「ObotAI」を導入し、旅行者の利便性向上を図りました。

「ObotAI」は、日本語・英語・中国語・韓国語に対応し、外国人旅行者からの問い合わせにAIが即座に対応。1人ひとりのニーズに応じた案内を実現し、観光案内窓口の負担軽減や人件費削減にも貢献しています。

参考記事:【福岡県北九州市】ウェルカム北九州!キャンペーンWebサイト 株式会社 ObotAI

まとめ

多言語チャットボットを活用すれば、言葉の壁を越えてスムーズな対応が可能になります。顧客満足度の向上や業務の効率化、人手不足の解消にもつながるため、多くの企業にとって有益なツールといえるでしょう。

ただし、導入時には誤訳のリスクや運用体制の整備が不可欠です。適切なサービスを選び、運用のポイントを押さえることが重要になります。外国語対応に課題を抱えている方、多言語対応を強化し、ビジネスの成長につなげたい方は、ぜひこの機会に導入を検討してみてください。

執筆者 浦 将平

AIチャットボットのプロダクトマネージャー。

7年間にわたり、法人向けの顧客管理ツール、データ統合ツール、CMS、チャットボット、電子ブックのマーケティングを担当し、BtoB領域でのプロダクトの成長に携わる。マーケティング戦略の立案から実行までを幅広く手がけ、業務プロセスの仕組み化を得意とする。

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