AI-OCRとはOCRと何が違う?メリットや活用業務をくわしく解説
公開日 2025/04/25

AI-OCRとは、AI技術を活用して手書き文字や非定型フォーマットの書類も高精度でデータ化できる次世代のOCR(光学的文字認識)です。従来のOCRでは難しかった複雑な書類の読み取りが可能になり、業務効率化やデータ入力の負担軽減につながります。
しかし、効果的に活用するためには、仕組みやメリット、選び方を理解したうえで導入を検討することが重要です。
本記事では、AI-OCRの仕組みやメリット、選び方のポイントを詳しく解説します。
目次
AI-OCRとはいったい何?
まず「AI-OCR」の基礎知識について解説します。
AI-OCRとは手書き書類を自動でデータ化する技術
AI-OCRは、人工知能(AI)を活用した光学文字認識技術です。光学文字認識技術とは、紙に印刷された文字や手書き書類をデータ化できる技術を指します。
従来のOCRに比べ、AI-OCRは、手書き文字や複雑なレイアウトの書類でも高精度で読み取り、データ化できます。AIが多様な文字パターンを学習し、読み取り精度を向上できるため、従来のOCRでは難しかった作業も読み取り可能です。
手作業でのデータ入力の手間を省けるため、業務の効率化やコスト削減などに寄与します。
AI-OCRの仕組み
手書き文字や複雑なレイアウトの文書を高精度にデータ化する「AI-OCR」は、以下の工程で行われます。
- 画像の前処理:スキャンした文書のノイズや歪みを補正し、文字部分を抽出する。
- 文字の検出:前処理した画像から文字の領域を特定し、区別する。
- 文字認識:AIが学習したパターンをもとに、検出した文字を照合・判定し、デジタルデータに変換する。
- 後処理:認識したデータの誤りを補正し、最終的なデータを作成する。
上記の工程において、先進的なAI技術を活用するため、AI-OCRは従来のOCRよりも高精度な文字認識を行うことができます。
OCRとの違いを比較
AI-OCRと従来のOCRの主な違いは、AI技術の活用により、手書き文字や非定型フォーマットの文書でも高精度な文字認識が可能な点です。複雑な文書や非定型フォーマットの処理には、AI-OCRの方が適しています。
以下の表は、AI-OCRと従来のOCRの違いをまとめたものです。
項目 | AI OCR | 従来のOCR |
---|---|---|
技術の基盤 | AI・ディープラーニングを活用 | ルールベースの文字認識技術 |
認識精度 | 高い (手書き文字や複雑なレイアウトにも対応可) |
低い (印刷された定型フォーマットのみ高精度) |
前処理の柔軟性 | 自動で画像を最適化(ノイズ除去、歪み補正) | ノイズや歪みへの対応が限定的 |
文字検出 | AIが文書全体から自動検出 | 事前に設定したエリアのみ認識可 |
学習能力 | あり(継続的な学習で認識精度が向上) | なし(固定アルゴリズムに依存) |
多言語対応 | AIが複数言語の認識に対応 | 言語ごとに設定が必要 |
適用範囲 | 手書き・非定型フォーマットなど幅広い用途 | 定型フォーマットに限定される |
読み取り後のデータ変換 | 自動変換・連携可能 | 単純なテキストデータとして出力だが、手作業が必要 |
様式が異なる文書の読み取り | 得意 | 不得意 |
AI-OCRを使うメリット
AI-OCRを使うことで様々なメリットが得られます。代表的な3つのメリットについて解説します。
手書き文字や歪んだ文字も認識できる
AIを活用したAI-OCRは、手書き文字や歪んだ文字も認識できるというメリットがあります。特に、ディープラーニングを活用したAI-OCRは、文字の特徴やパターン、規則性を理解して覚えるため、学習を重ねることで継続的に精度を向上できます。
そのため、従来のOCRでは困難だった癖のある文字や複雑な文字も、読み取ることが可能です。
時間の節約で業務効率が向上する
AI-OCRを活用することで、紙の請求書や大量の書類データを短時間でデジタル化でき、業務効率が飛躍的に向上します。従来の手作業によるデータ入力と比較して、作業時間の大幅な短縮や、人的ミスの削減にも効果的です。
さらに、書類のデジタル化はペーパーレス化につながり、物理的な保管スペースやコストの削減、検索性の向上などの役割も果たします。
データ検索や情報共有も簡単にできる
AI-OCRを活用して紙の書類をデジタルデータとして保存することで、データ検索や情報共有が容易になります。過去のデータ照合や分析も迅速化できるほか、RPAや基幹システムと連携することで、データ入力作業も自動化できます。
また、チーム内外での情報共有やバックアップを効率的に行うことができ、重要な意思決定に必要な情報を短時間で得ることが可能です。
ヒューマンエラーが減らせる
AI-OCRを導入することで、手動での入力ミスや誤認識を大幅に減らせます。誤認識が発生する可能性はありますが、担当者がその確認や修正に集中できるため、ミスを事前に防ぐ効果が高まります。
ヒューマンエラーを減少させ、データ管理のアクセシビリティも向上し、業務効率が大幅に改善される点は大きなメリットです。
AI-OCRを使ったデジタル化の活用業務
AI-OCRは、さまざまな業務分野でのデジタル化を促進し、効率化を実現できます。以下に、主な活用例を示します。
- マーケティング:アンケート結果や獲得した名刺の情報を読み取って、迅速にデジタル化できる。
- 経理・財務業務:領収書や請求書の内容を自動的に読み取り、会計システムへの入力作業を効率化。
- 物流:納品書や送り状の情報をデジタル化し、出荷・入荷管理の精度とスピードを向上。
- 教育:手書きの答案用紙やアンケートを読み取ってデジタル化し、採点やデータ分析の負担を軽減。
- 行政・公共サービス:古い行政記録や申請書類をデジタルアーカイブ化し、情報の保存・検索性を向上。処理業務の効率化を実現。
- 医療:手書きのカルテや問診票を電子カルテ化し、患者情報の管理を効率化。
上記の分野などでAI-OCRを導入することで、紙媒体の情報を迅速かつ正確にデジタルデータ化し、業務プロセスの効率化と積極的なデータ活用を実現できます。
AI-OCR導入時の注意点
AI-OCRを導入する際に、気をつけるべき注意点について紹介します。注意点を意識して対応することで、業務効率化や、コスト削減などを実現できます。
識別精度は100%ではない
AI-OCRは従来のOCRに比べて認識精度が大幅に向上していますが、それでも100%の正確さを保証するものではありません。特に手書き文字や複雑なレイアウトでは誤認識が発生する可能性があります。
そのため、導入時には画像の前処理や辞書テーブルとの照合など、補正機能を活用することが重要です。また、誤認識が業務に影響を与えないよう、必要に応じて目視確認の工程を設けることも求められます。
導入から運用まで時間がかかる
AI-OCRの導入には、システムのカスタマイズや従業員のトレーニングなど、運用開始までに時間とコストがかかります。しかし、適切な準備を行えば、業務の効率化や生産性向上につながる有益な投資となります。
スムーズな導入のためには、事前にニーズを分析し、段階的に実装することが重要です。また、無料トライアルを活用し、実際の業務での効果を確認することで、最適なシステムを選定できます。
AI-OCRの選び方7つのポイント
AI-OCRを選定する際に注目すべき7つのポイントについて紹介します。
ポイント1.コスト
様々な企業から多様なAI-OCRソフトが販売されているため、いくつかのツールを比較したうえで導入することが大切です。
無料のソフトは導入コストを抑えられますが、認識精度が低い場合や機能制限があるため、業務効率化に結びつかない可能性があります。一方、有料のAI-OCRは精度が高い分、月額数万円〜数十万円のコストがかかります。
導入時には、初期費用や運用コストを考慮し、削減できる業務時間や人件費を検討しましょう。コストに見合う効果を得るために、無料トライアルを活用することをおすすめします。
ポイント2.対応文書形式
AI-OCRの対応文書形式は、大きく3種類に分けられます。導入前に、自社の業務で使用する帳票の種類を確認し、適切なAI-OCRを選びましょう。
- 定型フォーマット型:フォーマットが決まった帳票(申請書、アンケートなど)に適し、認識精度が高いが、異なる形式には対応不可。
- 準定型フォーマット型:フォーマットは異なるが項目が共通する帳票(請求書、納品書など)向け。部門ごとに使用する場合は高パフォーマンスを発揮。
- 非定型フォーマット型:フォーマットが定まっていない文書(契約書、報告書など)を処理でき、柔軟な運用が可能。抽出精度は高められないが、様々な資料がある場合に最適。
製品ごとに対応範囲が異なるため、業務に最適なタイプを選びましょう。
ポイント3.処理量や速度
AI-OCRを選ぶ際は、処理速度と処理量に注目しましょう。大量の帳票を扱う業務では、バッチ処理機能があるツールを選ぶことで、一括処理が可能になり、業務の効率化につながります。
また、即時性が求められる業務(例: 配送ラベルの読み取り、受付業務など)では、リアルタイム処理に対応したツールが適しています。処理速度が遅いと業務の流れを妨げるため、導入前に必要な処理量やスピードを試算し、最適なAI-OCRを選定しましょう。
ポイント4.拡張性
AI-OCRを導入する際は、将来的な拡張性も考慮することも重要です。業務拡大に伴い処理量が増える場合や、新たな帳票形式に対応する必要が出てくることを想定し、拡張可能なツールを選びましょう。
また、AI-OCRは定期的なアップデートによって認識精度や機能が向上します。クラウド型のツールであれば、常に最新の技術を活用できるため、導入後も継続的に業務効率を向上させることが可能です。
ポイント5.セキュリティ
AI-OCRを選ぶ際は、セキュリティ対策がしっかりしているかどうかの確認が不可欠です。特に、機密情報を扱う場合はデータ暗号化の有無や、GDPRや個人情報保護法に準拠しているかをチェックしましょう。
また、データの保存方法も重要です。クラウド型は利便性が高い一方で、外部アクセスのリスクがあるため、強固なセキュリティ対策が必要になります。社内サーバーで処理を完結させたい場合はオンプレミス型を選ぶと、安全性をより高めることができます。
機密情報を扱う場合、データ暗号化やGDPR、個人情報保護法に準拠しているか、またクラウドかオンプレミス(社内サーバーで完結させたい場合)かを解説してください
ポイント6.連携性
既存システムとの統合: ERP、CRM、会計ソフトなど、自社で使っているツールとAPIやプラグインで連携可能かを解説してください。 同上URL参照
AI-OCRを選ぶ際は、既存システムとの連携性を確認する必要もあります。ERP、CRM、会計ソフトなど、自社の業務ツールとAPIやプラグインを通じてスムーズに統合できるかをチェックしましょう。
適切な連携ができれば、AI-OCRで読み取ったデータを自動で各システムへ反映でき、手作業の削減や業務の効率化につながります。導入前に、使用中のソフトウェアとの互換性や、カスタマイズの可否を検討することがポイントです。
ポイント7.サポート体制
AI-OCRを導入する際は、サポート体制の充実度も重要なポイントです。特に日本語対応のサポートがあるか、マニュアルやFAQが整備されているかなどを確認しましょう。
導入後にトラブルが発生した場合、迅速に対応できるカスタマーサポートがあると安心です。また、無料サポートの範囲や、有料サポートのオプションについても事前に確認し、予算内で適切な支援を受けられる製品を選びましょう。
比較したうえで自社に最適なAI-OCRサービスを選ぼう
本記事では、AI-OCRの仕組みやメリット、選び方のポイントを詳しく解説しました。
AI-OCRを導入することで、業務の効率化やデータ活用の幅が広がるというメリットがあります。ただ、効果的に活用するためには、コストや対応文書形式、処理速度、セキュリティなどを考慮し、自社に最適なツールを選ぶことが重要です。特に、既存システムとの連携やサポート体制は、運用のしやすさに大きく影響します。
無料トライアルを活用して実際の業務で試すなど、慎重に比較検討しながら、自社のニーズに合ったAI-OCRサービスを導入しましょう。