営業事務の仕事を効率化するには?具体的な方法・手順・事例を解説
公開日 2025/08/18

営業事務の業務が増える一方で、「人手が足りない」「対応に追われて本来の業務に集中できない」といった悩みを抱えていませんか?ツールの導入による効率化を耳にしても、「実際には何から始めたらよいのか分からない」という声も聞かれます。
営業事務の業務は幅広く、属人化しやすい傾向がありますが、実は適切な方法とツールを活用すれば、効率化することができます。この記事では、営業事務が抱えやすい課題を整理したうえで、効率化を進める具体的な方法や導入手順、さらに実際の成功事例やおすすめのツールについて解説します。
目次
営業事務の主な仕事
営業事務とは、営業担当者の業務が円滑に進むよう支援する役割を担うポジションです。主な業務内容は以下のとおりです。
- 見積書・契約書・提案資料などの書類作成
- 顧客情報の管理電話やメールでの問い合わせ対応
- 商品の受発注業務や納期の確認・調整
これらの業務は、営業活動そのものには直接関与しないものの、営業担当者が顧客対応や提案に専念できるよう環境を整える重要な役割です。また、業務内容が多岐にわたるため、社内外との連携や情報整理のスキルも求められます。
営業事務が抱える5つの課題
営業事務は裏方でありながら、実は非常に多くの業務と責任を抱えています。ここでは、営業事務が直面しやすい具体的な課題について解説します。
1.担当業務の範囲が広く覚えることが多い
営業事務の仕事は、書類作成や顧客管理、受発注処理、営業資料の作成など、業務範囲が非常に広いのが特徴です。単なる事務作業だけでなく、扱う商品やサービスの知識、業界動向なども理解しておく必要があります。
そのため、新しく担当する人にとっては覚える内容が多く、慣れるまでに時間がかかります。結果として、一人にかかる業務負担が重くなりやすいのが現状です。
2.急な予定変更に素早く対応しなければならない
営業事務の現場では、営業担当者や顧客から急な依頼や予定変更が入ることが珍しくありません。たとえば、当日の訪問先の変更や急ぎの見積書作成といった対応が求められる場合、優先順位を組み直す必要が生じます。
その結果、通常の業務が後回しになり、定時内に終わらないケースも多く、残業の原因になりがちです。このような「突発対応の常態化」は、精神的にも体力的にも負担となります。
3.「ミスが許されない」というプレッシャーを感じやすい
営業事務は、顧客との信頼関係に直結する重要な情報を日々取り扱っています。そのため、金額や納期の入力ミス、書類の誤送信といった小さなミスが大きなトラブルに発展するリスクがある一方で、業務は手作業中心でヒューマンエラーが発生しやすい環境にあります。「絶対に間違えてはいけない」という意識が常に求められ、精神的な負担が積み重なりやすい業務といえます。
4.担当者によって仕事の進め方や質が異なる
営業事務の業務は標準化されていないことも多く、担当者ごとのやり方や判断に任される部分が少なくありません。その結果、処理のスピードや書類の精度にばらつきが出やすく、引き継ぎもうまくいかない場合があります。
また、属人化が進むと、急な欠員が出たときに業務が滞るリスクも高まります。安定した業務品質を保つためには、マニュアル化やフローの整備が求められます。
5.営業と顧客の間で板挟みになりやすい
営業事務は、営業担当者と顧客の間に立って業務を進めるため、双方の要望に応える必要があります。営業側からは「もっと丁寧な資料を用意してほしい」、顧客側からは「早く簡潔に説明してほしい」といった異なる期待を受けることもあります。
バランスを取りながら仕事を進めるのは想像以上に難しく、精神的なプレッシャーやストレスを感じやすいポジションです。
営業事務がキャパオーバーするとどうなるのか
営業事務の業務量が限界を超えると、単なる効率の問題にとどまらず、企業全体の生産性や人材定着にも悪影響を及ぼします。ここでは、その具体的な影響について解説します。
仕事の質が低下して顧客からの信頼を失う
担当業務が回りきらなくなると、一つひとつの作業に十分な時間をかけられず、確認漏れや入力ミス、対応の遅れが発生しやすくなります。たとえば、見積書の誤送信や納期の遅延などが重なることで、顧客との信頼関係が損なわれるリスクが高まります。
営業活動を支える営業事務の品質が低下すれば、最終的に営業部門全体の評価や企業の売上にも悪影響を与えるおそれがあります。そのため、営業事務のキャパオーバーは早期に対処すべき重要な課題です。
休職・退職などによって人手不足が加速する
営業事務の業務負担が大きくなると、心身のストレスが蓄積し、体調を崩して休職する人や退職する人が増える傾向にあります。一人の離脱がチーム全体の負荷増加を招き、残ったスタッフへのしわ寄せがさらなる離職を生む悪循環に陥ります。
とくに少人数体制の中小企業では、一人の離脱が業務全体に大きな影響を与えるため、早期の対策が不可欠です。また、人材の流出は、採用・育成コストの増加にも直結します。
職場の雰囲気の悪化
営業事務がキャパオーバーの状態にあると、気持ちに余裕がなくなり、社内の人間関係に摩擦が生じやすくなります。
営業部門では円滑な連携が重要であるため、雰囲気の悪化は業務効率や営業成果にも悪影響を及ぼします。健全な職場環境を維持するためにも、業務負荷の適正化は欠かせません。
営業事務を効率化する6つの方法
業務負荷を軽減し、ミスや属人化を防ぐためには、営業事務の効率化が不可欠です。ここでは、現場で実践しやすい具体的な改善策を紹介します。
1.マニュアルを作成する
業務を効率化する第一歩は、作業手順を可視化することです。営業資料の作成手順やよくある問い合わせへの対応方法などをマニュアル化すれば、業務の属人化を防げます。担当者ごとの差が減ることで、作業の精度が安定し、業務の質も向上します。
また、新人教育の際にもスムーズな引き継ぎが可能になり、現場の負担軽減につながります。マニュアルは、紙でもデジタルでも構いませんが、更新しやすい形式で管理することが重要です。
2.インサイドセールスを実施する
インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議などを活用し、訪問せずに営業活動を行う手法です。外出を伴わないため、営業担当の移動時間が削減され、業務全体の効率が向上します。営業事務にとっても、急な資料準備や日程調整の手間が減ることで、負担の軽減が期待できます。
また、営業活動が記録・共有されやすくなることで、社内の情報連携が円滑になります。対面営業に頼らない柔軟な体制づくりは、リモートワークや多拠点展開にも対応できる強みになります。
3.定型業務を自動化する
営業事務には、毎回ほぼ同じ形式で繰り返される定型業務が数多く存在します。たとえば、請求書や見積書の作成、メール文面の作成、案件データの入力などは自動化しやすい業務です。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や帳票作成ツールを導入することで、作業時間を大幅に短縮できます。人の手を介さずに処理できる部分を増やすことで、ヒューマンエラーの防止にもつながります。
4.アウトソーシングを利用する
営業事務の一部業務をアウトソーシングすることで、社内リソースの最適化が図れます。たとえば、定型的なデータ入力や資料作成、電話対応など、専門性が低く外部に任せやすい業務は外注に向いています。アウトソーシングを活用すれば、社員はコア業務に集中でき、生産性が向上します。
ただし、情報管理や対応品質に注意が必要で、業務内容によっては外注化が適さないものもあります。コストと効果を見極めながら、外部委託する範囲を慎重に検討することが重要です。
5.営業支援ツールを導入する
営業支援ツール(SFAやCRM)を導入することで、顧客情報や商談履歴、案件の進捗状況を一元管理できます。これにより、営業事務が必要な情報を探す手間が省け、作業効率が大幅に向上します。
また、入力項目が標準化されるため、情報の記録漏れや重複の防止にも効果があります。営業担当との情報共有もスムーズになり、社内全体での連携力が強化されます。日々の事務作業を最適化するには、使いやすく、自社の業務に合ったツールを選定することがポイントです。
6.メール・電話以外のコミュニケーションツールを導入する
営業現場では、メールや電話によるやり取りが主流ですが、対応に時間がかかりやすく、情報の伝達ミスや抜け漏れが生じることもあります。SlackやChatwork、Microsoft Teamsなどのビジネスチャットツールを活用することで、迅速かつ効率的なコミュニケーションが可能になります。
やり取りの履歴が残るため、過去の情報確認や共有もしやすく、チーム全体の業務効率が向上します。社内外との連携を強化し、営業活動を円滑に進めるためにも、ツールの導入は有効な手段です。
営業事務で効率化しやすい4つの業務
営業事務の中には、テンプレートやツールの活用、アウトソーシングで効率化しやすい業務が多数あります。ここでは特に見直しやすい4つの業務に絞ってご紹介します。
1.書類・資料の作成
営業資料や提案書、見積書、契約書などの作成業務は、営業事務の中でも特に頻度が高く、効率化しやすい分野です。テンプレートや専用ツールを活用すれば、作成時間を大幅に短縮できるうえ、内容の統一や品質の安定化も図れます。
とくにクラウド型のテンプレート管理ツールを導入すれば、誰でも一定のフォーマットで資料を作成できるため、属人化の解消やミスの削減にもつながります。結果として、営業担当者の対応スピードや顧客満足度の向上にも貢献します。
2.書類・顧客情報・営業状況の管理
営業支援ツール(SFA)を導入することで、書類の保存だけでなく、顧客情報や営業状況を一元的に管理することが可能になります。
情報は入力するだけで自動的に登録されるため、記録の抜け漏れを防ぎ、正確なデータ管理が実現します。さらに、検索機能や絞り込み機能により、必要な情報にすばやくアクセスでき、確認や共有の手間を省くことができます。これにより、日々の事務作業が効率化され、営業活動全体のスピードと精度が向上します。
3.顧客対応
顧客からの問い合わせ対応やアポイント調整など、インサイドセールスで担える業務の幅は年々広がっています。対応の質を維持しながら業務負担を軽減するには、機密性の低い業務をアウトソーシングするのが有効です。
マニュアル化できる業務であれば、外部パートナーに委託することで、社内の人材リソースをより重要な業務に集中させることができます。これにより、全体の業務効率を高めつつ、顧客対応のスピードや柔軟性も向上させることが可能になります。
4.電話対応
電話対応は営業事務の中でも特に集中力と時間を奪いやすい業務です。電話代行サービスを導入することで、重要な連絡のみを社内で対応できるようになり、作業の中断を減らして業務効率が向上します。
さらに、よくある問い合わせにはチャットボットを活用することで、24時間自動対応が可能になり、顧客対応のスピードと精度を両立できます。これにより、社員の負担軽減と顧客満足度の向上を同時に実現することが可能です。
営業事務を効率化する5つの手順
営業事務の効率化は、現状の業務を可視化し、課題を特定することから始めるのが成功の近道です。ここでは、営業事務を効率化するための5つの手順をご紹介します。
1.営業事務の現状を把握・分析する
まずは、営業事務の仕事がどのように進められているかを正確に把握することが重要です。業務の流れや担当者ごとの作業分担、各業務にかかる時間を洗い出すことで、ムダや非効率な部分が可視化されます。
あわせて、現場の担当者にヒアリングを行うことで、マニュアルや表面上では見えにくい課題やボトルネックも明らかになり、より実態に即した効率化の方向性を導くことができます。
2.問題点・課題を特定する
可視化された業務から、非効率な業務を抽出します。たとえば「何度も同じ情報を手入力している」「紙のやり取りが多くて確認に時間がかかる」といった具体的な問題が挙がることがあります。
こうした課題に対しては、なぜそのムダが生まれているのか、業務フローのどこに原因があるのかを深掘りし、根本的な改善策につなげていく視点が求められます。
3.効率化する業務に優先順位を付ける
すべての課題を一気に改善するのは現実的ではないため、効率化の効果が高く、すぐに着手できる業務から優先順位を付けて進めることが重要です。たとえば「書類のフォーマット統一」や「メール返信の定型化」などは、導入コストが低く即効性があるため、最初の改善策として最適です。
小さな成功体験を積み重ねることで、現場の納得感や協力も得やすく、次のステップへのモチベーションにもつながります。
4.効率化のための具体的な方法を検討する
改善すべき業務が明確になったら、次はその業務をどう効率化するかを具体的に検討します。たとえば、繰り返し作業にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、定型の問い合わせにはチャットボット、進捗管理には業務管理ツールの導入が有効です。
あわせて、既存の作業フローをゼロベースで見直し、「その作業は本当に必要か?」「他の業務と統合できないか?」といった視点でムダの排除を図ります。ツール導入と業務設計の両面から改善策を検討することが、効果的な効率化に繋がります。
5.改善した業務の進め方の実践・修正
改善策を導入した後は、それを実際の業務に落とし込んで運用してみることが大切です。最初から完璧な方法にたどり着くことは難しいため、現場でのフィードバックを受けながら柔軟に修正を加えていく姿勢が求められます。
たとえば、「作業は早くなったが抜け漏れが増えた」「現場の操作負担が増えた」といった声があれば、ツールの設定を見直したり、別の方法を試すなどの対応が必要です。改善を一度きりで終わらせず、定期的に検証と調整を繰り返すことが、継続的な業務品質の向上に繋がります。
営業事務の効率化の成功事例
営業事務の効率化は、多くの企業で喫緊の課題となっています。ここでは、実際に業務効率化に取り組んだ3社の事例を紹介します。導入前の課題、導入した方法、得られた成果を通して、自社に応用できるヒントを見つけましょう。
アウトソーシングで提案資料を作成|株式会社NieV
株式会社NieVでは、社員の提案資料作成にかかる負担が大きく、コア業務に集中できないという課題を抱えていました。そこで、資料作成業務を専門のアウトソーシングサービス「HELP YOU」に委託。社員が作成指示を出すだけで高品質な資料が納品される体制を構築しました。その結果、提案業務のスピードと品質が向上し、社員は本来の営業活動に専念できるようになっています。今後は他業務への外注拡大も視野に入れています。
営業支援ツールの導入で入力の負担を軽減|イーピーエス株式会社
イーピーエス株式会社では、日々の営業活動に伴う情報入力が煩雑で、社員にとって大きな負担となっていました。そこで、クラウド型の営業支援ツール「ちきゅう」を導入し、案件情報の管理と進捗共有を効率化。入力作業をシンプルにすることで、営業担当者の手間を大幅に削減し、データの一元管理も実現しました。属人化していた業務の標準化にもつながり、今では他部門との連携もスムーズになっています。
生成AIで資料作成を自動化|株式会社水上三洋商会
株式会社水上三洋商会では、営業資料の作成に多くの時間と工数がかかり、生産性の低下が課題でした。そこで、ChatGPTなどの生成AIを活用し、営業資料のたたき台を自動生成する仕組みを導入。担当者は生成された原案をもとに調整・修正するだけで済むようになり、資料作成時間を約60%短縮することに成功しました。今後は、他の事務業務にも生成AIを活用し、さらなる業務効率化を図る計画です。
営業事務の効率化に役立つツール
営業事務を効率化するには、業務に合ったツールの活用が欠かせません。ここでは、営業支援に特化した2つの注目ツールをご紹介します。
IZANAI(イザナイ)
IZANAI(イザナイ)は、営業プロセスの自動化・効率化を支援するクラウド型の営業支援ツールです。顧客の興味関心や行動履歴に基づき、自動で提案シナリオを構築できるため、見込み客への最適なアプローチが可能になります。また、営業資料の自動配信やメール開封・資料閲覧といった行動ログの可視化機能も搭載。属人的な営業からの脱却を促し、誰でも成果を出しやすい営業体制の構築をサポートします。インサイドセールスやマーケティングとの連携にも効果的です。
ActiBook(アクティブック)
ActiBook(アクティブック)は、従来のPDFや紙の営業資料を、スマートフォンやPCで閲覧可能なデジタルブックに変換する営業支援ツールです。資料を送るだけでなく、誰が・いつ・どのページを閲覧したかといった詳細な行動ログを取得できるため、見込み客の関心度に応じたタイミングでのフォローが可能になります。これにより営業活動の精度が高まり、無駄な接触を減らして成果につなげやすくなります。コンテンツ配信と顧客分析を一体化し、営業活動の効率化に貢献します。
営業事務の効率化は業務改善の第一歩
営業事務の効率化は、単なる作業の省力化にとどまらず、組織全体のパフォーマンス向上につながります。まずは業務の棚卸しから始め、非効率な工程を見極め、改善に取り組むことが重要です。
RPAやチャットボット、アウトソーシングといった手法を活用すれば、少人数でも高い成果を出せる体制が整います。現場の声を反映しながら、柔軟に運用を見直していくことで、持続的な業務改善が可能になります。ぜひできるところから一歩を踏み出しましょう。