業務が属人化しやすい中小企業にとって、業務フローの可視化と改善は避けて通れない課題です。

誰がどのように業務を進めているのかを見える化することで、無駄や重複を発見しやすくなり、効率化や生産性向上につなげられます。しかし「どこから手をつければいいのか分からない」という声も少なくありません。

そこで本記事では、業務フロー改善の基本知識から具体的な進め方、さらに実際の成功事例までをわかりやすく解説します。

業務フローと業務改善の基本概念

まずは、業務改善に欠かせない基本知識として「業務フロー」とは何かを解説します。また、なぜ業務フローの改善が重視されているのかについても説明します。

業務フローとは？業務プロセスとの違いは？

業務フローとは、特定の業務におけるタスクの順序や担当者の役割を明確にし、業務の流れを図で可視化したものです。

似た言葉に「業務プロセス」がありますが、こちらは個々の作業手順の連なりを指すのに対し、業務フローは業務全体の関連性や流れを俯瞰的に把握するためのものです。

業務フローを可視化することで、現状の課題や非効率な箇所を発見しやすくなり、改善策の検討や担当者間の情報共有もスムーズになります。

業務フロー改善の重要性

業務フローの改善は、業務の属人化を防ぎ、組織全体の効率化や生産性向上につながる非常に重要な取り組みです。

業務の流れを可視化することで、属人化している作業や手順上の無駄、ボトルネックを明確に把握でき、改善策を具体的かつ効率的に検討できます。また、フローが整理されることで、担当者間の情報共有がスムーズになり、業務の標準化や新人教育の効率化にもつながります。

単にマニュアル化するだけでなく、現状の課題を洗い出し、改善の優先順位をつけて実行することで、業務の質を高めることが可能です。

業務フローを改善することは、最終的に組織全体の安定した運営や、持続的な成長を支える基盤の構築にもつながるため非常に重要とされているです。

業務フロー改善の進め方5ステップ

業務フローをより効率的にするには、具体的にどのような手順で取り組めばよいのでしょうか。ここでは、その進め方を5つのステップに分けて解説します。

STEP1：対象業務の選定と目的設定

まず、改善対象となる業務を明確に選定します。その際、「コストを20％削減する」「処理時間を半分に短縮する」といった具体的な目的を設定することが重要です。

目的を明確にすることで、関係者の認識が揃い、取り組みの方向性がぶれるのを防げます。また、業務の流れや必要人員を可視化し、現状の課題や改善ポイントを洗い出すことで、後続のステップで効率的に改善策を検討できる基盤を整えます。

STEP2：現状業務の調査とヒアリング

次に、対象業務の担当者へのヒアリングを通じて、実際の作業内容や手順、所要時間、現場で感じている課題を詳細に把握します。さらに、現場のオペレーションを直接確認し、業務フローを一つひとつ書き出すことで、見落としのない正確な現状分析が可能になります。

また、担当者の意見を反映することで、無駄や非効率な部分をより明確に把握でき、後の改善策の検討に役立つ基盤を整えることが可能です。

STEP3：業務フロー図の作成

調査とヒアリングが終わったら、現状把握した業務をもとに、業務フロー図を作成します。開始・終了、プロセス、判断などの標準的な記号を使い分け、業務の流れを視覚的に整理して、誰でも理解しやすい図を目指しましょう。

フロー図を作成することで、作業の順序や担当者間の関係、重複や無駄な手順を一目で把握することが可能です。改善策検討や関係者との共有をスムーズに進める基盤を整えることができます。

STEP4：課題の洗い出しと分析

次のステップでは、作成した業務フロー図をもとに課題を洗い出します。たとえば、「同じ作業が重複していないか」「承認待ちで時間が停滞していないか」といったポイントを確認します。

問題を表面的に把握するだけでなく、なぜその状況が発生しているのか原因を深掘りすることが重要です。根本原因を特定することで、一時的な対処ではなく持続的な改善につながる解決策を導き出せます。

STEP5：改善案の検討と優先順位付け

洗い出した課題に対して「作業を自動化する」「不要な承認プロセスを削減する」といった具体的な改善案を検討します。

ただし、すべてを一度に実行するのは現実的ではありません。そのため、効果の大きさやコスト、実行の容易さを基準に優先順位をつけ、段階的に取り組むことが重要です。優先度を整理することで、効率的かつ着実に業務改善を進めます。

業務改善を成功させる3つのポイント

業務フロー改善を効果的に進めるには、押さえておくべきポイントがあります。ここでは、改善を成功に導くために特に重要な3つのポイントについて解説します。

ポイント1：現場の理解と協力を得る

業務フロー改善には、現場の理解と協力を得ることが非常に重要です。改善活動は現場で実際に業務を担う人々の協力なしには成り立ちません。そのため、なぜ改善が必要なのか、どのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、納得感を持ってもらうことが必要があります。

また、意見を取り入れながら合意形成を図ることで抵抗を最小限に抑えられます。双方向のコミュニケーションを意識し、現場を巻き込む姿勢が成果につながります。

ポイント2：小さな成功体験を積み重ねる

大きな成果を一度に狙うのではなく、小さな成功体験を積み重ねることも、業務フロー改善には欠かせません。たとえば、100万円規模の効果を目指す難易度の高い施策よりも、10万円程度の効果でもすぐ実行できる改善とそれによる成功体験の獲得から始める方が効果的です。

短期間で成果を実感できれば、現場の納得感が高まり、次の取り組みへの理解や協力を得やすくなります。こうした小さな成功の積み重ねが組織全体に前向きな流れを生み、改善サイクルを加速させます。

ポイント3：継続的な見直しとPDCAサイクルを回す

施策改善は一度で終わらせず、継続的に見直す姿勢が重要です。実施後は作業時間や工数の変化を数値化し、改善効果を客観的に検証します。その上で、環境や業務内容の変化に応じてフローを再検討し、最適化を進めていくことが求められます。

計画（Plan）→実行（Do）→評価（Check）→改善（Act）のPDCAサイクルを回し続けることで、改善は一時的な取り組みではなく、持続的な成長を支える仕組みとして定着していきます。

業務フロー改善の成功事例

業務フロー改善に成功した企業の事例を紹介します。具体的な取り組み内容や成果を知ることで、自社で実践する際のヒントとしてお役立てください。

キリンホールディングス株式会社｜各メンバーの業務可視化による業務改善に成功

キリンホールディングス株式会社のIR室では、テレワーク環境下で各メンバーがどの業務にどれだけ時間を費やしているか把握しづらいという課題がありました。そこで、業務可視化ツール「TimeCrowd」を導入し、各メンバーの業務を打刻で簡単に記録できる仕組みを整備。

導入後は、ボトルネックや非効率な作業が明確になったことで、業務改善に直結しました。また、可視化によりコスト意識も高まり、チーム全体の生産性向上と個人の時間管理力向上にもつながっています。

参考：キリンホールディングスが業務改善への第一歩にTimeCrowdを活用 | TimeCrowd Blog

株式会社エポックケミカル｜電子カタログ導入で作業効率化と提案力強化を実現

株式会社エポックケミカルでは、紙のカタログによる情報提供が非効率で、在庫管理や差し込み作業に多くの時間がかかるという課題を抱えていました。

そこで、電子ブック作成ツール「ActiBook」を導入し、Web上で最新の商品情報や動画を提供できる電子カタログを作成。これにより、更新作業の工数を大幅に削減できるとともに、得意先が必要な情報を迅速に取得可能になりました。

また、営業担当は提案時に電子カタログを活用できるため、提案力も向上し、作業効率と顧客への訴求力の両立に成功しています。

参考：電子化で最新の情報を常に届けるカタログに！動画埋め込みやカタログの一覧表示で、お客様にオリジナル筆記具の魅力をより伝えやすく｜株式会社エポックケミカル様

業務フローを改善して、組織全体の効率化や生産性向上を目指そう

業務フローの改善は、単なる効率化の取り組みにとどまらず、組織全体の生産性や競争力を高める基盤づくりにつながります。

本記事で紹介した5つのステップを踏むことで、現状の課題を可視化し、改善策を効果的に実行する道筋を描くことができます。また、現場の協力を得ながら小さな成功を積み重ね、PDCAサイクルを継続することが成果を持続させるポイントです。

ぜひ自社に合った改善策を実践し、持続的な成長につなげてください。