総務にAIを導入するには?活用できる場面・メリット・注意点を解説
公開日 2025/10/21

総務部門の業務は、来客対応や備品管理、イベント運営など多岐にわたり、毎日のようにさまざまな作業が発生します。これにより「効率化したいけれど、どう進めてよいのか分からない」と悩んでいる経営者や担当者も少なくありません。とくに、総務業務はアナログ作業が多く、業務の負担が大きいという問題もあります。
その解決策として注目されているのが、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入です。この記事では、総務部門にAIを導入する際の取り組み方、メリット、注意点について解説します。実際の事例を交えながら、総務業務を効率化するための具体的な施策を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
総務が抱えている課題
総務部門は、業務範囲が広すぎて手が回らず、人手が不足し、アナログな作業が多く、効率化が進んでいないという課題を抱えている企業が多くあります。では、具体的にどのような課題があるのか紹介していきます。
業務範囲が広すぎる
総務部門の仕事は、来客対応や備品管理、社員の給与計算など、さまざまな業務を担当します。企業によっては、業務範囲が広すぎて、毎日多くの仕事に追われ、さらに突発的な業務が発生することもしばしばです。これにより、総務担当者は「会社のなんでも屋」と呼ばれることが多く、仕事の効率化が難しくなっています。
人手が不足している
総務部門は、業務範囲が広いにもかかわらず、十分な人手が確保できていない場合が多くあります。その結果、従業員一人あたりの負担が大きくなり、作業が滞ったり、急な対応に追われたりすることが増加します。このような状況では、業務の効率化が難しく、担当者は常に多くの作業に追われ続ける状態になってしまいます。
アナログな作業が多い
総務部門では、書類の管理や情報の共有がアナログで行われることが多く、作業効率が低下しています。たとえば、紙の書類を用いて管理したり、手作業で情報を修正・共有したりする作業は時間と手間がかかります。さらに、必要な資料を探すだけでも時間を要することがあり、業務の効率化が強く求められています。
総務でAIを活用できる事例
総務部門では、AIを導入することで業務を効率化することが可能です。ここでは、実際に活用されている事例を紹介します。
社内問い合わせの対応
AI搭載のチャットボットを導入すると、社内のよくある問い合わせに24時間対応できるようになります。たとえば、休暇申請の手順や経費精算の方法、福利厚生の利用方法など、定型的な質問に自動で応答することが可能です。
これにより、総務担当者は時間を節約でき、社員からの問い合わせにも素早く対応できます。さらに、繰り返し発生する対応業務をAIが肩代わりするため、担当者はより重要な業務に集中できる環境が整います。
参考:FAQを最適化するAIチャットボット|IZANAI Powered by OpenAI
議事録作成
音声認識や文字起こしができるAIを活用すれば、会議や電話の内容を録音し、自動で議事録を作成できます。これによって、手作業で議事録を作成する手間を大幅に減らすことが可能です。結果として、総務担当者は管理業務にかける時間を減らし、戦略的な業務に注力できるようになります。
勤怠管理
AIを利用した勤怠管理システムを導入すると、従業員の勤務状況をリアルタイムで把握することが可能です。長時間労働や不正な勤務の早期発見につながり、労働環境の改善が進みます。
さらに、AIは過去のデータを分析して残業時間の傾向や異常を素早く確認できるため、管理者の負担を軽減できます。手作業で行っていた勤務時間の集計も自動化されることで、精度が向上しミスを減少することが可能です。
経費精算
経費精算業務もAIの導入により大幅な効率化が可能です。AIは領収書のデータを自動で読み取り、経費申請を整理します。また、不正経費や誤った支出を検出することができ、経費精算業務のミスを減らす効果もあります。
これにより、手動での確認作業が大幅に減少し、業務のスピードを大きく向上させることが可能です。経費精算がスムーズになり、総務部門の負担も軽減されるため、全体的な業務効率の向上を図ることができます。
AIに任せるのが難しい総務の仕事
AIは多くの業務を効率化する強力なツールですが、総務部門のすべての業務に適用できるわけではありません。AIには得意分野と苦手分野があり、とくに人間の感情や判断が求められる仕事には向いていません。
たとえば、社内イベントの企画・立案でのテーマ選定やゲストの選定、社内の雰囲気に合わせた対応などは、柔軟で直感的な判断が必要な部分が多いため、AIにとっては難しい作業です。AIは感情を読み取ることができないため、特定の状況における臨機応変な対応が求められる業務には限界があり、最終的には人間の判断が重要です。
総務にAIを導入するメリット
総務部門でAIを導入することで、業務の効率化、コスト削減、時間短縮など、多くのメリットを享受できます。ここでは、具体的に得られるメリットについて紹介します。
他の仕事に集中できる
AIを導入することで、定型的な作業や反復的な業務をAIに任せることができ、総務担当者はより戦略的な業務に時間を割くことができるようになります。
たとえば、経費精算や書類整理、勤怠管理など、日々の手間がかかる業務をAIに任せることで、社員の生産性を向上させることが可能です。これにより、従業員は重要な業務に集中でき、組織全体の効率が大きく改善します。
また、AIの導入により、業務が迅速に処理されるため、企業の成長を支える体制が強化されます。
業務の属人化を防げる
AIを導入し、特定の社員だけが持っていた知識やノウハウをAIシステムに組み込むことで、業務の属人化を防ぐことができます。これにより、担当者が退職したり、休職したりした際に業務の引き継ぎをスムーズに行うことが可能です。
AIによって、業務内容や手順がシステム内で一元管理されるため、担当者が変わっても同じ質の業務を提供することができます。さらに、社内全体で知識や情報が共有されるため、社員間でのコミュニケーションが円滑になり、業務の効率も向上します。
コストを削減できる
AIの導入により、企業はコスト削減を実現することが可能です。AIにより業務の一部を自動化することで、従業員の負荷が軽減され、企業はその分の労働力を他の重要な業務に活用することもできます。
さらに、人員を増やさずとも業務が遂行できるようになるため、オフィスの拡張費や引越し費用といったコストを削減可能です。このように、AIが業務を迅速かつ正確に処理することで、企業のコストパフォーマンスを大幅に改善することができます。
業務時間を短縮できる
AIが、人手によって行われていたデータ入力や書類整理、確認作業などの定型業務を担うことで、総務担当者の作業時間が大幅に削減されます。
さらに、AIが繰り返しの作業をスピーディーかつ正確に処理するため、業務の効率化が図れ、従業員の労働時間の短縮にもつながります。この結果、残業時間の削減や労働環境の改善が進み、従業員の満足度向上を図ることも可能です。
戦略的な意思決定をしやすくなる
AIを活用することで、経営者や総務担当者は、業務に関連するデータを可視化し、意思決定をしやすくなります。
たとえば、経費の使用状況や備品の在庫管理状況をAIが分析し、必要な対策を提案することが可能です。AIによってデータが一元管理され、リアルタイムで可視化されるため、迅速な意思決定ができ、経営層にとっても非常に有益です。データドリブンな意思決定を行うことで、より効果的に企業の成長戦略を立てることができるようになります。
総務にAIを導入する手順
総務部門にAIを導入するには、計画的に進める必要があります。具体的にはどのような手順で導入を進めればよいのか、ここではその流れを紹介します。
1. 課題と目標を明確にする
まず最初に、総務部門で行われている業務の内容や作業フローを整理し、課題や改善が必要な業務を明確にします。
たとえば、どの業務に時間がかかっているか、どこでミスが多いのかを洗い出します。その上で、「経費精算の時間を削減したい」「書類管理を効率化したい」など、具体的な目標を設定することで、AI導入後の成果を測定しやすくなり、効果的な導入が可能です。
2. AIに任せる業務の範囲を決める
次に、AIに任せる業務の範囲を決めます。AIには得意な業務と苦手な業務があり、すべての業務をAIに任せることはできません。
まずは、どの業務がAIに適しているかを評価することが重要です。たとえば、定型的なデータ入力や書類整理、FAQ対応などはAIに向いていますが、創造的な業務や臨機応変な判断が求められる業務には不向きです。
また、既存のシステムとの連携がしやすい業務を選ぶことで、導入後のスムーズな運用を実現することができます。
参考:FAQを最適化するAIチャットボット「IZANAI Powered by OpenAI」
3. 導入するAIサービスを決める
AIにはさまざまなサービスがあるため、どのAIサービスを導入するか決定する際には、自社のニーズに合った機能を提供するサービスを選ぶことが重要です。
たとえば、書類管理や経費精算、勤怠管理など、必要な機能を持つAIサービスを見極め、複数のサービスを比較します。また、導入するサービスが既存のシステムと連携できるか、コストや導入後のサポート体制が整っているかも重要なポイントです。
4. AIモデルを構築する
AIを導入するためには、適切なAIモデルを構築する必要がある場合もあります。AIモデルは、導入後に業務を適切に自動化し、効果的に機能するために重要です。
もし自社内にAIの専門知識がない場合は、外部のAIベンダーやコンサルティング会社に依頼することが一般的です。外部パートナーは、企業のニーズに合わせて最適なAIモデルを設計し、実装する手助けをしてくれるため、スムーズにAIを導入し、業務の効率化を加速できます。
5. 検証・改善を繰り返す
AIを導入した後は、効果を定期的に測定し、改善が必要な部分を見つけることが重要です。AIツールを使っている従業員からのフィードバックを収集し、現場の声を反映させることで、より実務に即した運用が可能になります。
また、AIのパフォーマンスを評価し、業務が期待通りに効率化されているかをチェックすることも大切です。定期的な改善を行うことで、AIの効果を最大化することができます。
総務にAIを導入するときの注意点
総務部門でAIを導入する際には、いくつかの注意点を把握しておくことが重要です。ここでは、AI導入時のポイントと注意すべき事項を解説します。
導入前に従業員からの理解を得る
AIを導入し実際にAIツールを使うのは総務部門の従業員です。したがって、導入前に従業員に対して十分な説明を行い、AIに対する理解を深めてもらうことが重要です。
従業員の中には、業務の変化に対して不安を感じる人もいるため、その懸念に対しても適切に対応する必要があります。また、導入が決まった後は、AIツールの使い方やメリットをしっかりと伝える研修を実施し、スムーズな移行をサポートする必要があります。
初期費用・維持費用を考慮する
AIを導入するには、初期費用に加え利用費が掛かるため、費用対効果を慎重に分析することが大切です。
とくに、導入規模が大きくなると月額100万円を超えることもあるため、予算をしっかりと計画し、どれだけの費用がかかるのかを把握しておく必要があります。また、初期費用のほか、導入後の利用費や維持費にも着目し、企業の予算と期待している成果に適した選択をすることが求められます。
AIの精度をよく確認する
AIを導入する際、精度が非常に重要です。AIは誤った回答をする可能性があり、とくに学習していない情報やデータが不完全な場合、誤情報を生成するリスクがあります。そのため、AIを導入したら、まずは精度を確認し、定期的に結果を評価する体制を整えることが大切です。さらに、AIの出力結果は人間の手によって最終チェックを行うことで、精度の高い運用が可能となり、業務の正確性を保つことができます。
セキュリティ対策をしておく
AIを導入することにともない、企業の機密情報や社員の個人情報に対するセキュリティ対策をしっかりと行うことがより重要となります。
具体的には、データの暗号化やアクセス制限を設けることで、情報漏洩や不正アクセスを防ぐことが可能です。また、AIが扱うデータが企業の規定や法令に準拠していることを確認し、コンプライアンスを遵守する体制を整えることも重要です。このようにセキュリティ面でのリスク管理は、AI導入における基本的なステップとなります。
スモールスタートを心掛ける
AIの導入は一度に全てを変えるのではなく、スモールスタートで始めることが推奨されます。スモールスタートとは、まずは一部の業務からAIを導入し、その効果を確認しながら徐々に範囲を広げていく方法です。
これにより、初期の導入がうまくいかない場合でもリスクを抑えることができ、効果を実感しやすくなります。AI導入の成果を確認し、徐々にシステムを拡大していくことで、最終的に全業務にわたる効率化が可能です。
運用体制を構築する
AIツールを導入した後は、定期的なチェックと運用体制の構築が不可欠です。AIが正常に作動しているか、日々の業務に支障をきたしていないかを確認するために、担当者や運用チームを設置します。
問題が発生した場合には、速やかにアップデートや改善を行い、システムの安定稼働を維持することが求められます。このように、運用体制をしっかりと構築することで、AI導入後の効果を最大化し、長期的に業務効率化を図ることが可能です。
総務でAIを導入した事例
ここでは、実際に総務業務にAIを導入した企業の導入理由、方法、結果として得られた効果などの事例を紹介します
Zenken株式会社|多くの業務で50%前後の工数削減を達成
Zenken株式会社では、AIを導入し、総務部門で行っていた書類管理や勤怠管理業務を大幅に効率化しました。AIを活用することで、これらの業務の工数が50%前後削減され、社員が本来の業務に集中できる時間を大幅増加させることに成功しました。とくに、AIによる書類整理やデータ入力の自動化が進み、手作業で行っていた部分を大きく削減できた成果を踏まえ、今後はさらにAIの活用範囲を広げる予定です。
参考:Zenken総務部のChatGPT Enterprise活用事例 | Zenken AI
株式会社アーバンリサーチ|社内スタッフからの問い合わせ対応にAIを導入
株式会社アーバンリサーチでは、AIを活用して社内スタッフからの問い合わせ対応を効率化しています。AIチャットボットを導入し、社員からのよくある質問に自動で応答できる仕組みを整えたことで、従業員は迅速に必要な情報を取得できるようになりました。これにより、総務担当者の負担が大幅に軽減され、問い合わせ対応にかかる時間も削減された結果、業務全体のスピードも向上しています。
参考:【社内FAQ導入事例】アーバンリサーチ様『社内ポータルでよくある質問にチャットボットで即答』 - チャットボットのhitobo(ヒトボ) | アディッシュのチャットボット(ChatBot)サービス
総務の業務を効率化したいときにおすすめのツールを紹介
総務業務の効率化には、適切なツールを導入することが重要です。ここでは、総務部門で活用できるツール「IZANAI」と「ActiBook」を紹介します。
IZANAI(イザナイ) |FAQを最適化し問い合わせ業務を対応
「AIチャットボット「IZANAI(イザナイ)」は、FAQやマニュアルの情報をもとに、自動で高精度に回答する生成AIチャットボットです。ノーコードで誰でもすぐに導入でき、カスタマーサポートの定型対応を大幅に削減。
人が対応すべき「本当に重要な問い合わせ」に、もっと集中できる環境を作りましょう。
IZANAI(イザナイ)の主な特徴
- 社内資料やWebページを登録するだけで回答が可能
- PDF・Excel・WebサイトのURLなど、複数ソースを同時に学習
- FAQ整備が不十分でも、曖昧な質問に対応
- 面倒なシナリオ設計が不要
- 2週間の無料トライアル可能
参考:FAQを最適化するAIチャットボット|IZANAI Powered by OpenAI
ActiBook(アクティブック) |マニュアルを電子ブックで作成
ActiBookは、総務部門の業務を効率化できるツールで、とくにマニュアル作成をサポートします。PDFやOfficeファイルを紙面レイアウトのまま電子ブック化し、PC・スマホ・タブレットで閲覧できるツールできます。
閲覧数や検索キーワードを記録して、よく見られる情報を把握できます。頻繁に改訂する資料は同じURLで最新版に差し替えられ、配布の手間を抑えつつ最新情報を届けられます。検索機能で目的のページに素早く到達でき、無料プランで効果検証から始められます。
参考:わずか3ステップ「無料」で電子ブック作成|ActiBook(アクティブック)
総務部門のAI導入で業務効率化を実現
総務部門は、企業の中で多くの業務を抱えている部門であり、その業務の効率化が求められています。AIを導入することで、書類管理や経費精算、勤怠管理など、多くの業務が自動化され、作業の負担を軽減することができます。
また、戦略的な意思決定がしやすくなり、業務の属人化を防ぐことも可能です。このように、AIを活用することで、従業員は重要な業務に集中でき、企業全体の生産性を向上させることができます。
実際にAIを導入した企業の事例を参考にし、自社に合ったツールやサービスを選定し、業務の効率化を進めていきましょう。今後、AI技術が進化する中で、総務部門の業務もより一層効率化され、企業の成長を支える大きな力となることでしょう。